会員インタビュー「銀座 このひと」VOL.29   音楽の部屋 カンタータ  


小畑 洋子氏  
Yoko Kobata
音楽の部屋
「銀座カンタータ」 代表

会員にお話をお聴きする 「銀座 このひと」

 『音楽の部屋 カンタータ』は、「うたごえin Cantata」やクラシック・ ポピュラーなどジャンルを問わず室内楽を身近に楽しむ「カンタータ・サロンコンサート」、 他にシャンソン教室やタンゴ・コーラス・琴などのレッスンと様々な音楽を楽しむ場所。  月に一度のカンタータ主催のコンサートは十年続いて百回を超える。

サロンを運営する小畑洋子氏は、一方で中央区より委嘱された「動物との共生推進員」として、 飼い主のいない猫対策に、日夜奮闘を続ける銀座の猫たちの救世主でもある。

 

●音楽の部屋「カンタータ」をどのように運営されていますか
 コンサートに関しては、クラリネット奏者の白川毅夫(たか お)さんが、同じような楽器の演奏が続かないように、 音楽コーディネーターをやってくださっています。コンサートの後には私がご挨拶を兼ねて、古い銀座が残っている場所、 開発に依って生まれ変わる新しい銀座の魅力をご紹介させていただいています。
また、ここの場所貸しもしていて、コンサート以外でも、朗読の会とか、少人数の音楽会などでも利用していただいています。 銀座は集まりやすいということで、特に看板も出していないのですが、ネットで調べて来て下さいます。

●小畑さんからご覧になった銀座はどういうところですか。
 銀座は渋谷や新宿とは違い、雑踏は雑踏なのですが、雑踏というには上質なものがあるのです。 私だけでなくそれを好まれる方って多いと思います。銀座で昔の仲間と会い、お店の前で、また来年も会えるかなって 話して別れる方などお見受けすると、いい時を過ごされたのだなと思うのですね。

銀座って不思議な魅力があって、日常の中で忘れていたものを思い起こさせてくれたり、 何となくの新鮮さを与えてくれたりする場所じゃないでしょうか。 カンタータに来られる方々も、コンサートやイベントの後で銀座の街に繰り出して、散策だとかお食事だとか、 アフター・カンタータを楽しんでいらっしゃいますよ。

●ボランティアで野良猫を減らす活動をされていますが、きっかけは何ですか。
 あるとき、銀座に朝早く来ますと、交通事故にあった猫がいまして、「あれっ、猫がいるんだ」と思って。 それから注意していましたら、このビルの裏に住んでいたのですね。ここのビルだけでなく、あちこちのビルとビルの 隙間にパラパラと子猫がいるのがわかりました。
あ、これは何とかしなければだめだと。

それからは段ボール箱や網で捕まえて動物病院へ連れて行って、去勢・不妊手術をしたのですが、雌だと手術代が二万円、 十匹だと二十万円かかるのです。私、もう今月は食費なしだわって(笑)。
その時、中央区が飼い主のいない猫対策として、去勢・不妊手術費用を全額助成していると知り、町会から推薦してもらい 『中央区動物との共生推進員』になったので、手術費用の負担はなくなりました。それでも自分の車で、夜中に捕獲器を 仕掛けて早朝に見に行くのはたいへんでしたが、いろんな方が協力してくださり、手術した猫は三百匹以上になりました。

先日、タクシーに乗った時、銀座をよく走っているという運転手さんが、この頃車の前に飛び出す猫が少なくなったと、 何気なく言ったのを聞いて、よかったなと思いました。

●手術後の猫はどうするのですか。
 全部の猫を保護することはできないので、また街へ放す猫もありますが、ご近所の方に見守りをお願いしたりします。 子猫は新しい飼い主に引き取ってもらえるように、今はカンタータで「猫の譲渡会」を月に二回やっています。 銀座は人が集まるのにいい場所なので、都内他区・千葉・横浜・熱海や茨城からも皆さん車で連れていらっしゃいます。 この前も十八匹が新しい家族に迎えられました。

 五年前、福島の放射線汚染立ち入り禁止区域で保護された猫が三匹貰われていきました。 三匹を連れて来られたつくば市のボランティアさんの、「嬉しいです。来週末、防護服を来て現地に入り、新たに三匹保護できます」 という言葉に感激。私が猫の去勢・不妊手術を施す活動を今まで続けてきた中でいちばん力を与えていただいた言葉でした。

手術後の猫については、全部フォローできているわけではありませんが、年を取って病気になったり、再開発で居場所の なくなったりした何匹かは私が引き取って最後を看取りました。最後がきて、タオルや毛布の上で、穏やかに亡くなってくれると、 私も何か一区切りついたと安堵しますね。

今後も、譲渡会ができるような場所を提供してくださるところが増えていけばいいなと願っています。

●今後、やりたいことは何ですか。
 私の郷里は鳥取県ですが、これまで銀座という場所でサロンコンサートをやってきた経験を生かして、 今度は田舎でもやってみたいという計画を持っています。 田舎は大山(だいせん)の麓の田園地帯なので銀座とは正反対の場所ですが、空き家を活用できるので、 こちらでやっていたレコードを持って行ってレコードコンサートを発展させてみようかと思っています。
「銀座カンタータ」に対して「大山(だいせん)カンタータ」みたいな(笑)。

(取材・渡辺 利子)

 

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